バリー・タックウェル
R・シュトラウス作曲 ホルン協奏曲第1番 変ホ長調 作品11
実は、ネットでちょくちょくお話ししていたのが、正にこの本番だったんですよ。(^.^;)
今までで一番感動したコンサートは?とか、田中先生の事ばっかだけど、他に好きな人いないの?とか聞かれた時の答えがこれでした。
最初のEbなんて一瞬だけど、その一瞬で、その音のあまりの凄さに(・O・; となって、演奏終わるまで開いた口が文字通りふさがらず、涙がボロボロ出ていたんです。ビデオでは分からない感動がそこにはありました。やっぱ音楽は生に限りますっ!!
1.演奏者について
バリー・タックウェルといえば、神様『デニス・ブレイン』の正当なる後継者、なんて言われてますよね。でもやっぱりタックウェルはタックウェルです。
放送の解説では、デビューにしか触れていませんでしたが、15歳でデビューしてすぐ、16歳で、首席ホルン奏者になっちまったという、筋金入りの大天才です。こんなヤツぁ、世界中どこを探してもいませんって。(^.^;)
ダムが楽器を問わずプレイヤーにカリスマ性を発揮しているのと対照的…とまでは行きませんが、タックウェルは、『金管楽器の師匠』として有名ですよね。彼の書いた教則本は、全ての金管楽器奏者に愛読され、実践されてます。
この、『デニス・ブレイン』以来の『天才』について、濃いお話しをさせて頂きましょう。
・『天才の天才たる所以(ゆえん)』
文句無し。ミスター・パーフェクト。非の打ち所無し。これ以上何を言えばいいか分からない位ですよ。(^.^;)
あらゆる称賛をも超える称賛がそこにありました。実は、我が師、田中正大氏が唯一褒めているソリストが、タックウェルなんです。
この人の音、凄いでしょ?(^.^;)本当に(・O・;ってなっちまいますよ、生で聴くと。太い、明るい、柔らかい、響くっ!!およそ音という物の要素の良いと思われる部分全てを持っているという、実に羨ましい人です。
・『克服』
やはり天才らしく、何かありましたねぇ。実は彼、とんでもないマイナス要因を物心付いた頃から抱えてたんです。それは、金属アレルギー。金管楽器奏者なのに金属アレルギー。マウスピースを口に当てただけでかゆいかゆい…
そんな彼を救ったのが、ABS樹脂、つまり強化プラスチックでした。そう、学校のリコーダーの素材になってる、アレです。
マウスピースはいいけど、ぢゃあ楽器は?って事になりますが、彼が使用して来た楽器を並べると、一つの共通点が見つかります。それは、全てラッカーをかけた楽器であるという事。そんなマイナス要因をモノともせず、天才と呼ばれるに至った、そもそもホルンを吹こうと思ったところで、本当に凄いと思わざるを得ません。
・『金管楽器奏者の師匠』
これについては、私が解説するまでもありません。彼の教則本を読んで下さい。(^.^;)
まあ、それで終わらすわけには行かんので、彼の演奏法のどこがどう凄いのかをお話ししたいと思います。
マイナス要因を克服したのとは対照的に、滅多にいない程恵まれた条件を満たしているのも事実です。
先ず、何と言っても神様デニス・ブレインや、千葉馨氏を彷彿とさせるあの180cm超のガタイです。単純に考えて見て下さい。あなたの身長と肺活量を。んで、もし180cm超の身長だったとしたら、どの位肺活量は増えますか?よおく分かったでしょ?(^.^;)
更に唇の薄さ、これはペーター・ダムや我が師田中正大氏、更に不肖この佐々木も同様ですが、ホルンには不可欠とも言える条件です。そして歯並びの良さ。これにより、普通の歯並びの人よりも、ずっとスタミナのロスが防げます。なので、今、出っ歯にされたオレは、他の人よかバテやすいんですね。(^.^;)
そして最後に、どうしてそんなに支持されているのか?というところになると、実は最もおいしいところを分かり易く突いて来ているからであると言えるでしょう。
金管楽器の演奏に於ける天敵は、ズバリ、バテです。彼の言う事を聞けば、かなりそれは防げる事でしょう。そして、文面としては書いていない部分で、例えば、無意識にしている唇や口の環状筋等の動きが、いつの間にか制御出来る様になっていると思います。あ、成功してればですけどね。(^.^;)
2.この放送の聞き所
誰が何と言っても音です、音っ!!凄いっ!!正に文句無しっ!!…って前のページのコピペかよっ!!(^.^;)
聞き所は、全てなんです。本当にこの演奏、凄いですからね。
んで、ダムの時は、NHKホールの音の悪さが幸いして、なんて書きましたが、この演奏にも、別の意味でそれが言えます。
よく聞き比べて頂きたいのですが、タックウェルだけ、残響が大きく聞こえませんか?これこそ彼の真骨頂なんです。
私もブロードウエイ・ミュージカル、『42nd Street』でNHKホールには一ヶ月間出演し続けましたが、あそこまで長い残響時間なんて出るホールだとは思えません。本当にそういった意味で、国際的に有名なホールなんです。
ところが、このタックウェルの演奏だけは、あたかもリバーブとかエコーとかかけたかの様な残響がはっきりと聞こえます。
少し話題が逸れるみたいで実はそうでは無いのですが、我が師、田中正大氏が、この演奏の前まで口を酸っぱくして我々弟子達に言い続けた事があります。その台詞をそのままどうぞっ!!
『おめえらなあ、タックウェルなんてどうってことねえって思ってるだろ?レコードのタックウェルなんてタックウェルぢゃねえんだよ。いいか、生で聴け。間違いなくあいつの音が一番なんだよ。』
実際にこの演奏で、本当によくわかりました。開いた口がふさがらない状態は、この演奏と、師匠の第九の最初のロングトーンだけでしたから。(^.^;)
さて、では何故ここまで残響があるのでしょう?答えは、聴いていて気付いた人も多いはずですが、そう、有り余る『息』の成せる業なんです。
つまり、客席に行く前に、更に舞台上に出るところで、本人の体内で充分響いている証拠なんですね。腹式呼吸が如何に大切な物なのか、本当に良く分かる演奏です。
そして、その『響き』で歌うのが、タックウェルの真骨頂なんです。あの独特な艶っぽさは、この『響きで歌う』ところから来てます。正に金管楽器の理想がここにあります。
私自身、『改心の一撃!!』とか『クリティカルヒット!!』とか上機嫌になれる演奏が出来た時は、これが出来ていた時です。これが金管楽器の素晴らしさの素なんですね。
更に、およそ音の良い部分の…というところは、全てこれの成せる業であると言い切れると思います。本当に素晴らしいです。
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