弾正どっとこむ 2003年7月13日N響アワー1
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2003年7月13日N響アワー1

三つのホルンの曲を放送した番組を、懇切・丁寧・おせっかいにも熱く解説します。ビデオ録画した人は必見!!

目次 | ペーター・ダム | バリー・タックウェル | ヘルマン・バウマン?

ペーター・ダム

シェック作曲 ホルン協奏曲
 美しいっ!!実に美しいっ!!もうこの一言に尽きると思います。
 何と言ってもこの美しい音ですっ!!
 分かり易い様に、各ページに共通の項目を付けてお話ししたいと思います。

1.演奏者について
 ペーター・ダムといえば、ホルンに限らず、他の金管楽器、木管楽器、弦楽器、打楽器、鍵盤楽器…結局全部(^.^;)に幅広いファン層を誇る事でお馴染です。
 その優しい音色で、特に女性プレイヤーに強力なカリスマ性を持っております。
 また、その柔らかい音色は『ビロード』のみならず、『暖炉の暖かさ』とか『ワインレッド』とか、様々に形容されております。
 そんなダムについて、詳しいお話しをさせて頂きます。
・『誠実の人』
 私の記憶が確かなら、確かこの演奏の時の来日シリーズで、他の公演のキャッチコピーが、これだった気がします。
 石橋メモリアルでのリサイタルで、主催者側の都合で、一曲カットになってしまったんですね。それでは申し訳無いと、彼は延々とアンコールを吹き続け、何と11曲も演奏してくれました。本当に有り難うっ!!(;_q))クスン
 更に、日本のアホなプロモーターが企画した、モーツァルトマラソン、つまり四つの協奏曲を一回のコンサートで全部吹くという無茶を聞いて、ちゃんと完璧にやってくれました。何ていい人なんだっ!!(;_q))クスン
・『学者肌』
 私がダムの顔を始めた写真で見た時の印象が、『歯医者さんみたいだ』でした。でもあながち遠くは無かったんですね。
 彼の演奏理論は実に理路整然としていて、とても分かり易く表現されてます。特徴的なのは、演奏法を『医学的見地』と『運動的見地』とに分けているところですね。
 また、モーツァルトの研究では第一人者です。彼が、モーツァルトのホルン協奏曲第五番(K494a)が発見された時に講義をしてくれたんですが、私も受講しておりました。この時に触れた彼の深い知識は、生涯の宝となっております。
・『管楽器奏者のお手本』
 では彼は一体、どんな事を言っているのでしょう?
 先ず、小学生の内に金管楽器の演奏を始めてはいけないと言ってます。実際、そのせいで肺気胸や気管支喘息等、問題を抱えた事のあるプロのプレイヤーも少なくはありません。
 小学生の内は、リコーダーを練習し、中学や高校で、個人の成長に応じて金管楽器を始めるべきだ、と言ってます。おっしゃる通りだと思います、オレも。
 次に、彼の演奏理論では最も特徴的なのが、声楽の技法を活かす、という発想です。演奏法は元より、表現に至るまで、声楽は長い歴史とノウハウを持っており、且つ、声帯という身体の一部を発音体としている事から、最も金管楽器の演奏法へのフィードバックが高いのだそうです。
 実際に私自身、残念ながらダムから習う事は出来ませんでしたが、全く同じ発想で、音大の声楽の同級生(呉淳雄、武蔵野卒業後は芸大へ)から発声法と呼吸法を習い、格段の成長を遂げた経験があります。彼特有の表現や、あの余裕に満ちた演奏法は、実はこれが原点なんですね。
 それから有名なのが、『ノン・プレス奏法』です。これは、マウスピースを唇に押し付けないで音を出す演奏法で、彼自身、大リーグボール養成ギブス特訓の為のマシーンを開発し、販売してます。彼特有の軽い、木管楽器的で、高音域でも変わることの無い音色は、この『ノン・プレス奏法』の成せる業です。
 ところがこの『ノン・プレス奏法』ですが、プレイヤーによって向き不向きがあるので、プレスを軽くする程度に留めた方が良い場合が多いです。もう一生ノン・プレスでやっていく、という覚悟があれば話は別です。

2.この放送の聞き所
 誰が何と言っても音です、音っ!!凄いっ!!正に文句無しっ!!
 でもこう思った人が案外多いでしょう。『ダムの音って、もっと柔らかかったはず…』
 実は、NHKホールの音の悪さが幸いして、もう一生ものの音源となってしまったみたいですね、この演奏。
 ダムの音は、柔らかさが際立ってます。その為、ああなりたいと思う人たちの多くは、柔らかさだけを追及して、ついつい暗い音を出してしまいがちです。
 確かに、ホールで響いた結果としては、CD等で聞くダムの音ではあります。ところが、ベルに顔を向けて間近で聞くと、生のダムの音は、トランペットに近い、とてつもなく明るい音なんです。
 前述の通り、NHKホールの音の悪さが幸いして、この録音では、その片鱗が見え隠れしてます。ダムの音は、決して暗くはないんです。むしろ、あらゆるホルン奏者の中でも、極めて明るい音に入ります。その明るさが故に、ホールで充分響く事が出来るのです。
 また、今回はソリストとしての彼の演奏でしたが、是非聴いてもらいたいのが、『本職?』である、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の首席奏者としての彼の演奏です。何と!!ビブラートかけてなかったりしますっ!!更に、音もソロの時と違うんです。
 こういった部分から、よく言われるのが、『ダムの真似はしない方がいい』という台詞です。ホルンでソロだけで食って行くのは、実際きついんですね。(^.^;)
 但し、ソロの時は話は別です。大いに結構です。でも絶対忘れてはいけない事があります。それは、『芸術家』であること。ダムの真似は真似止まり。あくまでも自分でなければいけないはずです。でもなあ、趣味でやってる人には、きっとこれもアリなんだろうなあ…
 今日の彼の演奏を聴いて、痛感したのは、いかに『柔らかくて明るい音』を出す事が難しい事か、という事です。本当に難しいです、こればっかりは。
 それを完全に自分のものとして表現出来るダムを、心より羨ましく思います。そしていつか、こんな人を相手に作曲する日が来て欲しいと思ってます。頑張れ!!オレ!!(^o^)v

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