ホルンにまつわる苦悩
ホルンにまつわる苦悩
私がホルンを演奏するようになったのは、中学校のブラスバンドからです。そしてそれ以来、ことあるごとに、「ホルンって何?」と尋ねられてしまいます。
もう面倒なので、この場をお借りして説明しますので、二度と私に訊かないで下さい。面倒です。本当に面倒なんです。
ホルンは、カタツムリみたいな形をした、丸い楽器で、胸に構えて演奏します。これを言うと決まって言われます。「ああ、あの大きいのね」とか、「上にデカいラッパがついてるやつね」…もうこりごりですよ。もう説明し飽きましたよ、本当に。一つ目はテューバで、二つ目はスーザフォンです。違いますから。本当に違いますから。これを説明してもまだ疑う人がいますが、本当に違うんですよ。更に、私の言葉を信じたところで、「じゃあ、どんなの?」と訊かれます。ここから先、どう説明したらいいものなのか、はっきり言って閉口してしまいます。こっちは誇りを持ってやってるんですから。
上の写真がそうです。これはヤマハのホルンです。ヤマハは国産品で、海外でも有名ブランドで、巨大なシェアを誇ってます。ここまで実は、日本はホルンに関して凄いものがあるんですよ。知らない人は、これを見て、どうにか納得して下さい。お願いですから。もう私に上記のようなやりとりはさせないで下さい。
ホルンは、オーケストラの要となる楽器です。西欧諸国では、オーケストラに於いて、音楽監督(一番偉い指揮者)、コンサートマスター(指揮者のすぐ横にいる、第一バイオリンの中の一番偉い人)と並び、首席ホルン奏者がそれはそれは尊敬を集める存在となっております。そもそも、オーケストラ全体の音色を左右してしまうほど影響力のあるのがホルンという楽器で、このセクションの音色自体がオーケストラの個性ともなっております。更に、第一ホルン奏者によって演奏される要所要所のソロは、作曲家にとっては最もノリノリでやりがいのある部分で、数多くの作曲家達が数多くの美しい旋律を残しています。そのため、オーケストラでは、聴衆が指揮者やコンサートマスターの次に氏名を覚え、大変な人気者なんですよ。ここまでおいしい存在であるこの楽器が、どうしてこの日本では、こんなにマイナーなんでしょうか?申し訳御座いませんが、私には全く以てわかりかねます。全く理解致しかねます。ですが、考えてみると、それだけこの国では、オーケストラを「観ない」という事ではないでしょうか?皆さん聴くとは思うんですよ。西欧諸国との違いを考えてみると、日本はCDやFM等のリスナー人口はそこそこあると思うのですが、コンサートには行かないと思います。ヨーロッパでは、やはり演奏会場へ出かけるという習慣が根づいていると思うんですよ。だから、あの美しい音を出す楽器が、真ん中でぐるぐるで、身体に巻き付けて上にラッパがあって、デカい、等と、誰も思わずに済んでいるのではないでしょうか?
さて、何だか愚痴っぽくなってますが、ここで、ちょっとかわいいお話を致しましょう。音大生時代、実家に夏休みで帰省した時の事です。私の実家は、新潟で食堂を営んでおりました。帰省すると、私は出前を手伝っておりました。そしていつもの様に、御近所のお得意さんへ出前をした時のことです。おばあちゃんが出てきました。そして、「おめさんのやってなさるぐゎっき、あれなんてんね?」(あなたの演奏しているのは何という楽器ですか?)と訊いてきました。またか、等と思いつつ答えました。「ホルンです。」おばあちゃんはやはり分からないようで、「ホルンてなんらあ?」(ホルンって何ですか?)と訊いてきたので、「ラッパみたいなもんですよ。」と答えました。するとおばあちゃんは、「おめさん、音大行ってばか大変なんねえ。ラッパ吹きしったら、踊らねばねえし、いいっぺことやることあるんねえ(^o^)」(あなた、音大なんかに行って、とても大変なんですねえ。ラッパを吹いてたら、踊らなくてはいけないし、沢山やることあるんだねえ)…私は言葉を失いました。もう降参です。参った。
頑張れにっぽんっ!!

